こんにちは、たむらです。

 システム開発で基幹系システムや金融系システムの開発に携わる際に会計の知識を使うことがあると思いますが、そもそもシステム開発という業務自体は会計上どの様に扱われているのか意識したことはあるでしょうか?今回はシステム開発業務そのものが、どう仕分けされるのかをまとめてみたいと思います。

 なお、ここで書いている内容は私が以前所属していた会社などの情報を元にしたざっくりしたもので、複雑な会計仕訳を正確に示したものではありません。また会社により異なるものでもある為、あくまで一例であり、参考情報として読んで頂ければと思います。


まず、一口にシステム開発といっても、仕訳はその開発(契約)形態により大きく異なります。代表的なケースである以下の3つのケースでそれぞれ見ていきましょう。

1. 受託開発
2. SES(役務)
3. 自社開発


1.受託開発

 発注元からシステム開発の依頼を受注し、開発して納品する迄を請負う形態です。日本のシステム開発会社の6~7割はこの形態であると言われています。

 この受託開発の場合、スキームが似ていることから土木・建築の請負工事と同じ様に会計処理をすることが多いです。いつ売上や費用を計上するかという観点で、「工事進行基準」「工事完成基準」という2つの方法があります。システム開発の場合、納品後にお客様から検収を貰ったタイミングで請求書を提示することが多いのではないかと思います。この場合は完成時に一括して売上と費用を計上する「工事完成基準」を使うことになります。(「工事進行基準」は、案件の進捗状況に応じて費用と売上を計上していく方法になります。)
   
◆ 受注時
借方貸方
仕訳なし

◆ 検収時
借方貸方
売掛金など売上
売上原価 人件費
水道・光熱費
オフィス家賃 etc.
※ 開発に関わった人件費とそれに伴う水道・光熱費等のすべての費用は売上原価となります。
     
費用を事前計上する場合や、会社の決算期をまたぐ受託開発案件がある場合は、費用は仕掛品という勘定科目で計上します。

◆ 決算期をまたぐ場合の仕訳
借方貸方
仕掛品人件費
水道・光熱費
オフィス家賃 etc.


そして、仕掛開発が無事検収となった時は下記の様な仕訳となります。

◆ 決算期をまたいだ検収時
借方貸方
売掛金など売上
売上原価仕掛品
(+当期発生費用)

2.SES(役務)

システムエンジニアリングサービスや役務で開発に携わる形態です。客先に常駐して開発する様なケースも多いですよね。委託契約の形態であり、分かりやすく言ってしまえば労働力を提供します。

 この場合は、(SES以外でも使われる)役務収益役務原価 という勘定科目を使って仕訳を行います。費用を事前計上する場合は仕掛品で一度計上した後、収益を計上するタイミングで役務原価に振替えます。収益に関しては役務収益で計上します。

◆ 費用の事前計上をする場合
借方貸方
仕掛品人件費 etc.

◆ (サービス提供後)収益計上時
借方貸方
売掛金など役務収益
役務原価仕掛品

3.自社開発

 その名の通り自社でシステムを開発しているケースです。ラクーンの様に自社サービスとして提供するものは勿論、販売目的でパッケージソフトを作っている場合や自社利用のシステムを開発している場合もこれに当たります。自社開発の場合、その開発案件が資産となるかどうかで仕訳が異なってきます。
   
a) 資産となる場合
 将来の利益獲得または費用削減が確実であると判断できるソフトウェアの開発の場合は会社の資産として扱うことができます。
      
 資産計上が可能なケース
  • 販売目的のパッケージソフトの開発(=販売により利益獲得が見込める)
  • スーパーデリバリーの海外版開発(=利用者の拡大による利益獲得が見込める)
  • 社内向けサービス保守システム(=効率化により費用削減が見込める)

 この場合、開発に関わる費用(人件費、光熱費、必要な機器など)は完成するまでは全てソフトウェア仮勘定という勘定科目で計上します。

◆ 開発中の費用計上
借方貸方
ソフトウェア仮勘定人件費
水道・光熱費
オフィス家賃 etc.

そして、開発が完了したらソフトウェア仮勘定をソフトウェアとして資産に振替えます。

◆ ソフトウェア完成時
借方貸方
ソフトウェアソフトウェア仮勘定


 その後、資産となったソフトウェアは、会計年度毎に減価償却費を計上し減価償却を行います。減価償却の期間はものにより3年または5年になります。
 (減価償却とは、長期間に渡って利用する資産の取得にかかった費用を、それを利用する期間で分割して費用計上しましょう、というものです。)


◆ 下記は開発に500万円かかったソフトウェアを5年で償却するとした場合の1年目の決算整理です
借方貸方
ソフトウェア償却        100万円ソフトウェア          100万円
※ソフトウェアの資産価値を500万-100万=400万とし、最終的に5年後に0にする様に処理します。

資産計上についての補足
 資産として扱えるソフトウェア開発の場合、開発に掛かるコストをローンを組むように後払い+均一化することができます。通常費用が先行して発生し、収益は後からついてくるものなので、そんな意味でも資産計上できると会社にとってはありがたいことなのかもしれません。
 なお、利益を生むと思われていたソフトウェアが期待通り利益を生まず、資産価値が無いと判断された場合や、事業で用いなくなった場合は除却処理(損失として費用計上すること)や、減損処理(低減した価値分を損失として費用計上すること)を行います。

◆ 上記のソフトウェアを丸3年経ったタイミングで除却した場合の仕訳
借方貸方
ソフトウェア除却損       200万円ソフトウェア          200万円
※3年経っているので100万円×3年分の300万円は減価償却されていて、ソフトウェアの資産価値は200万円になっていると考えます。


b) 資産計上が不可能な場合
 a) に当てはまらない場合です。どの様な場合かというと、
  • 不具合の修正開発
  • リファクタリング
  • 日々のサービス保守業務
      
 この場合は、発生する人件費などの開発に掛かる費用は全て費用として計上します。

◆ 費用を支払う際の仕訳
借方貸方
人件費現金など
水道・光熱費
オフィス家賃



 如何でしたでしょうか。やっていることは同じシステム開発業務でも、会社の事業活動への取り込まれ方は、その開発形態によって色々と違いがあるものですね。普段はあまり意識しないことかもしれませんが、自分の業務がどの様に会社の活動に繋がっているのを知ることで会社というものの理解を深められるかもしれません。興味があれば開発会社の財務諸表を見てみると面白いと思います。
   
 以上、システム開発業務がどの様に仕訳されているかという話でした。