駆け出しデザイナーに知ってほしい、コミュニケーションのコツ
こんにちは!デザイン戦略部のさとぅです。
今回は駆け出しデザイナーに知っておいて欲しい、デザイン制作をするうえで役立つコミュニケーションのコツをお教えしたいと思います。
私がデザイナーとして経験してきた成功や失敗がベースになっていますので、一般的に定説とされている内容とは若干違いがあるかもしれませんが参考になれば嬉しく思います!
デザイナーに求めらるコミュニケーションスキル
デザイナーと聞くと表現スキルがすごい人と真っ先に想像しがちですが、実はコミュニケーションスキルもそれと同等にすごい必要があります。
デザイナーの本来の仕事はクライアントの要望を適切に汲み取り課題を把握して目に見える形で解決することだからです。これを実現するために必要なのがコミュニケーションスキルです。
最近ではデザイナーの職域が広がり、オペレーターのような手を動かす作業はアウトソーシングしてクライアントや関係者とのやり取りを含めた総合的な制作を、デザイナーへ任せる傾向が世の中的にも多くなったように感じます。
弊社ではサービスを運営している事業会社とデザイナーやエンジニアが同じビルで働いていて、依頼の頻度が多く規模も大小さまざまです。ほとんどの依頼はデザイナーが直接事業部の担当者とやり取りをしてヒアリング→提案→制作→リリースまでを行います。そのため、デザイン戦略部ではコミュニケーションスキルがとても欠かせない要素となっています。
今回はコミュニケーションのインプット(受け取る)とアウトプット(伝える)、それぞれ10個のコツをご紹介します。
インハウスデザイナーや、ディレクターを目指している方には特にオススメの内容になっているので、ぜひ実戦で役立ててみてください!
※ラクーンでのクライアントの位置づけ
ラクーンではグループ会社の事業部がクライアントになります。同じビルで働いているため、コミュニケーションのとりやすさや提案のしやすさがデザインするうえでの大きなメリットになっています。依頼は社内掲示板やbacklogに起票してもらい、デザイナーが要望をヒアリング+工数見積もりとスケジューリングをして制作を開始します。
インプット編 10のコツ
①「仲良くなる」ではなく「知る」
デザインする上でコミュニケーションが重要な理由は、クライアントや仲間と良好な関係を築き連携して良い成果を生み出すためです。
「自分の好きなように表現したい」「人にいろいろ言われたくない」「楽して作りたい」など自分中心の考え方でデザインすると、クライアントや仲間と不調和になり良い成果が出せずデザインすることが楽しくなくなります。協調を意識してコミュニケーションをとることで、信頼関係を築きクオリティの高い成果を生み出すことができます。そのためまずは、相手の顔、名前、所属部署などの基本情報から、話した時の印象、どんな仕事をしている人なのか、しゃべり方のクセなど細かく観察してメモに残しておきましょう。できれば業務外の話題から趣味や好きなことなど、その人の性格を形成している要素を探り出してみてください。
重要なのは「知ること」であり「仲良くする」ことではありません。ここでのコミュニケーションは仕事のしやすさと良い成果を実現することが目的なので、仲良くなることを目的として頑張ってしまうと精神をすり減らし疲弊してしまうので混同しないよう気をつけましょう。
話が盛り上がったり共通の趣味があるなど気が合う人であれば仲良くすると良いでしょう!
②笑顔とリアクション
相手から必要な情報を漏れなく引き出すためには安心して気持ちよく話してもらう必要があります。
相手の発言に対して「分かってますよ」「受け入れてますよ」と笑顔でリアクションし、相槌を打つことで相手に安心感を与えるとができます。真面目に聞いてるがため、真顔になったりリアクションが薄くなると「起こってるのかな」「怖いな」など不安な気持ちにさせてしまうこともあります。ネガティブな印象を与えてしまうので気をつけましょう。
自然な笑顔やリアクションはある程度経験を重ねないと上手にはできません。慣れないうちは緊張で顔が引きつったり相槌がわざとらしくなってしまいますが、諦めないで回数を重ねていってください。
③分からないことは素直に聞く
クライアントや先輩と話をしていると、しばしば知らない単語や分からないシステムの話になることがあります。
分からないと思ったことはそのまま放置せず、できるだけその場で聞いて解決するようにしてください。
ミーティングの後に話を振り返って分からないことが出てきたら、それもすぐに聞きましょう。
不明瞭な状態で制作を進めてしまうと、相手が望まないものを作ってしまい作り直しが発生してしまいます。相手の信頼も失いかねません。
分からないことは恥ずかしいことではありません!必ず制作前に不明点は潰しておきましょう。
④話を反復する
相手が話していることに対して「なるほど、○○なんですね」のように内容を反復することで、相手に聞いていることをアピールすると同時に認識の齟齬を防ぐことができます。さらに自分が理解しやすい言葉に置き換えて「つまり○○ということですかね」と反復することで、自分と相手との理解の解像度を上げることができます。
⑤判断に迷った時は持ち帰る
ミーティングではデザイナーとしての判断を求められるシーンが多々あります。この場での判断は個人の判断ではなく、あなたが所属する組織としての判断になります。間違った判断をしてしまうと相手に誤解を与えてしまうので、話が理解できなかったり不明点があって判断が難しい場合は「いったん持ち帰って検討させてください!」とクライアントに伝え、必ず先輩や上長の判断を仰ぐようにしましょう。
⑥メモと議事録を忘れずに
ミーティングで決定したこと、決定に至るまでの経緯や話し合った内容は時間が経つと忘れてしまいます。
記録を残しておかないと「言った言わない」「やるやらない」など認識のズレによるミスコミュニケーションが起こり、作業遅延が発生したり関係者との信頼関係が悪くなってしまいます。メモをとったり議事録を残して関係者に共有しておくことで、内容の振り返りができ認識のズレを防ぐことができます。
議事録をとる際にはミーティング開始時に「議事録とります」のように宣言しておくと関係者も安心できるでしょう。
また、自分用に人とのちょっとした会話をメモに書き留めておくと、のちに何かの提案や会話に役立てることができるのでぜひ試してみてください。
⑦課題の本質を見抜く
クライアントへのヒアリングでは「何を課題に感じどんな感想を抱いたか」要望に至るまでの思考プロセスを探ることで、課題の本質と解決の糸口が見えてきます。例えば「この文言を赤にしてください」の要望に対して「何か気になることがありましたか?」と聞くと、「見落とすユーザーが多いから目立たせたいんです」と返答があったとします。このやり取りでは「ユーザーが見落とす」+「目立たせたい」=「赤」という相手の思考プロセスが分かり、解決すべき課題が「ユーザーが見ないこと」であることが分かります。この本質を見抜くことで要望通りに文字を赤にすることだけでなく、文字の大きさや文章の内容変更、更にはページ自体の情報整理まで幅広い視点で最適な改善提案を行うことができるようになります。
⑧「目的」「目標」「ゴール」を明確に
依頼を受けたら「なんのためにやるか(目的)」「なにをするか(目標・手段)」「どうなりたいか(ゴール)」を必ず明確にしましょう。
クライアントから「○○をデザインしてください」のような要望をもらった場合、デザイナーとしてやるきことは要望通りにデザインすることではなく、課題に対し最大限効果的な解消手段を提案することです。そのためには、まず⑦で紹介したように「デザインをする目的」を確認して課題の把握をします。次に「デザインによって何を解決し、どうなることがゴールか」の認識を合わせます。最後に「課題を解消しゴールに辿り着くための手段」を考えます。この手順でクライアントと一緒に考えることで、お互い頭の中が整理され共通認識を持ってスムーズに仕事を進めることができます。
日常的な例に置き換えてみると「最近太ったので痩せるため(目的)」→「お米を食べないようにして(手段)」→「理想的なスタイルになる(ゴール)」となりますが、理想のスタイルを手に入れることをゴールとするなら、手段としてバランスの良い食事をして体を動かしたほうがより効果的です。お米を食べないことを目的としてしまうと理想的な結果が得られないので、何かを達成するために「目的」「目標」「ゴール」を意識することを心がけましょう。
⑨バイアス(かたより)をかけて見ない
相手に対して「言葉足らずで分かりにくい」「いつもレスが遅くて困る」など1度自分の中で負の印象を形成してしまうと、悪いところばかり目についてしまい相手とのコミュニケーションがとりづらくなってしまいます。直感的に人を判断するのではなく「言い方が雑なのは人見知りのせい」「レスが遅いのはいつも忙しいから」のようにポジティブに考え、良いところを見つけるため多方面から相手を見るよう心がけましょう。実際あなたに悪意を持って接してくる相手なんてそういないものです!
⑩共感を大切に
相手の立場に立って共感し思いやることは、相手を知るための基本でありデザインで課題解決するための最大の武器になります。
共感するためには話を聞いて「なるほど」で終わらせず、想像力を働かせて「自分がこの人の立場ならどう思うだろう」と考えることが大切です。完全に相手の気持ちを理解することは難しいですが想像することならできます。そのために相手の話に対して質問をし深掘りして、自分が想像できるゾーンまで解像度を上げるクセをつけていきましょう。
アウトプット編 10のコツ
①挨拶と感謝
積極的な声掛けは相手に好印象を持ってもらえます。
入社して間もない頃は周りの人のことがよく分からないのと同じく、相手もあなたのことが分かりません。
相手からのアクションを待つのではなく、自分を知ってもらうためにたくさん挨拶や声掛けをしましょう。
特に何かをしてもらった時は「ありがとうございます」の感謝の言葉を大切に!みんな感謝されたら嬉しいものです。
②ミーティングには事前準備を
ミーティングがスムーズに進行するよう事前に準備できることはやっておきましょう。
参加者の名前、所属部門、どんな仕事をしている人かなど基本情報を収集したり、先輩や仲間が持っている情報も共有してもらうと良いでしょう。
事前に議題が共有されている場合は、関連情報や分からないことは調査しておいて自分の意見をある程度まとめておきましょう。
話すことを想定して「どんな順序で」「何を話して」「どんな結果にしたいか」を決めておくとスムーズに伝えることができます。
③最初に説明、最後にまとめ
もしあなたがミーティングを設定した場合は、参加者に対して何を伝えるか明確にするため「何のため」「何をして」「どんな結果にしたいか」目的・目標・ゴールを丁寧に説明するようにしましょう。※インプット⑧参照
例えばミーティングの始めに「今回のミーティングでは、依頼内容をもとにデザイン案をABC3つご用意したので、それぞれの案に対しご意見いただき最終的に一案に絞っていただきたいと思います」のような感じで伝えておくことで、あなたがミーティングで実現したいこと、参加者にしてほしいことの認識を一致させることができます。相手も何をすべきかが明確になるので意見が言いやすくなります。更に事前にメールなどで内容の共有をしておくと親切でしょう。
ミーティングの最後には「〇〇のようなご意見をいただいたので、A案をもとにブラッシュアップを進めていきたいと思います」のように内容をまとめて振り返っておくと認識のズレがないでしょう。
④説明はシンプルに
説明が長いと情報量が多くなるので、頭の整理が追いつかず何を話しているか理解できなくなり、話の本筋を見失ってしまいます。
一般的に「説明は30秒以内に」と言わており、短くシンプルに説明することが大切です。
最初にざっくり大枠の説明をし、その後から詳細→結論という順番で話すと伝わりやくなります。
例えば「クリック率を上げるために3つのポイントを意識して作りました。1.ボタンに影をつけて立体的に見せる、2.ボタンカラーを暖色にする、3.フォントサイズを大きくする、こうすることで視認性が上がるためユーザーもクリックしやすくなると考えました」のような感じです。
デザインの話をする場合は言葉だけで伝えるのは難しいので、事前にデザインサンプルを用意してモノを見せながら説明することで伝わりやすくなり、相手の要望もその場で反映させることができます。
⑤提案は必ず2案以上
人から何か提案をもらった時に案が1つだけで反応に困ったことはないでしょうか。特に自分の専門外の提案となると、それがベストな案だと思い込んでしまうものです。
デザインの提案を受ける相手も同じ感覚なので、複数案から選択できるよう最低でも2案は用意して持っていくようにしましょう。
一般的には3案とされていて、1案目は要望通り、2案は要望通り+自分の考えを反映させたもの、3案目は1~2案目と全く違う視点から作った捨て案、とされています。本音を言えば3案用意してほしいですが、実際用意するのは時間がかかって大変だと思うのでここでは最低2案以上としておきます。
ちなみに案が多すぎると相手が選択に困るので、MAX5案ぐらいにとどめると良いでしょう。
⑥曖昧な返答はしない、予測で話さない
分からないこと、判断に迷うような質問をされた時にその場で曖昧な返答をすると、相手に誤解を与えたり不信感を持たれてしまいます。
「分からないのでもう少し詳しく教えてください」「今は決められないから持ち帰って検討し返答します」とはっきり伝えて、不明点をなくし自分の中でしっかり理解したうえで、責任を持って返答することを心がけましょう。
⑦感情的にならない、否定しない
クライアントや仲間との話し合いの中で意見の食い違いは必ず起こります。相手は自分と違う人間なので、考え方や感じ方が違うのは大前提として異なる意見が出るのは当然です。相手の言葉尻りや意見に反応して感情的に話をしてしまうと、相手は否定されたように感じてしまいます。
もし意見が食い違った場合は、まず一呼吸して冷静になりましょう。自分がどんな意図で話をしているか理解してもらえるよう丁寧に伝え、相手がどんな経緯でその考えになったかを探り、意見のすり合わせができるポイントを一緒に見つける雰囲気を作ります。それでも厳しい場合は客観的意見を取り入れるため、第三者に話し合いに参加してもらいましょう。短気は損気!冷静に自分を俯瞰して見るよう心がけましょう。
⑧自信がない時は先輩や上長に援護要請を
初対面の人とのミーティングや不慣れな場での説明はちゃんとできるか不安なものです。そんな時は事前に内容を共有し先輩や上長に一緒に参加してもらうのも手です。申し訳なくて遠慮してしまうかもしれませんが、慣れないうちはたくさん頼ってフォローしてもらいつつ振る舞いを間近で見て盗むことも大切です。
⑨デザイン以外の視点を取り入れる
インハウスの場合、デザイナーの制作物は事業部の担当者が企画しコーダーやエンジニアによって実装されてユーザーに使われるようになります。
3部門に渡って別々の仕事をしていますがユーザーには1つのプロダクトとして認識されるので、UXやUIが統一されたデザインを制作することがデザイナーに求められ、事業理解とシステム理解をしていることが重要になってきます。
そのため関係者の仕事に興味を持って積極的にコミュニケーションをとり、サービス運営に関する幅広い知識を身につけてデザインに取り組むことが大切になります。
⑩ユーザーに感動を届ける
弊社には「期待+1」という考え方と、デザイン戦略部には「泣きデザイン」というアイデンティティがあります。
前者は相手の期待値をほんの少しだけ上回る努力をしようという考え方で、後者は泣くほど感動するデザインをしようという意味が込められており、2つに共通することは相手を感動させるという点です。デザイナーであれば誰しも作ったものに対して「スゴイと思われたい」「喜んでもらいたい」という気持ちがあるはず。
自分たちの作るモノが誰かの感動に繋がることを意識しながらデザインしてみてください!
※「泣きデザイン」については別の機会に記事にします!
→期待+1について
最後に
いかがでしたでしょうか?
自分の仕事を振り返りながらこの記事を書いてる途中、デザイナーの仕事って大変だなーと思いました笑
そして改めてデザイナーたちに対してリスペクトを感じながら、やっぱりデザインの仕事は魅力的で楽しいなーと率直に思いました。
この記事の内容がデザイン制作での助けになれば幸いです!