ラクーンのデザインクオリティ管理方法、教えます!
こんにちは!昨年からデザイン戦略部で部門長を務めています「さとぅ」です。
どのデザイン会社や組織でもクオリティを担保するためのチェックを行いますが、ラクーンのデザイン戦略部(以下デザ部)でも「カンプチェック」という名前でデザインのクオリティ管理を行っています。
今回はこのカンプチェックについて、何を目的としてどんな方法で行っているかご紹介していきたいと思います!
カンプチェックとは
まずは「カンプ」という言葉のおさらいから。
カンプ= Comprehensive layout(包括的レイアウト)で、すべての要素がそろった状態の仕上がり見本のことを「カンプ」と言います。
デザイン業界ではデザイナーとクライアントのイメージを共有するための「仕上がり見本」をデザインカンプと呼んでいます。
デザ部ではデザイナーが制作したデザインカンプを、部内のスキル上位者がチェックすることを「カンプチェック」と呼んでいます。
次にカンプチェックが制作フローのどのタイミングで行われるかご紹介します。
1.依頼者から依頼内容をヒアリング
↓
2.カンプ作成+セルフカンプチェック
└チェック者へチェック依頼を投げる前に、カンプチェックと同等のチェックをセルフで行います。
↓
3.カンプチェック+フィードバック
└スキル上位者がチェック依頼の内容をもとにチェックを行い、デザイナーへフィードバックをします。
↓
4.修正→再度カンプチェック依頼
↓
5.依頼者+関係者チェック
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6.マークアップ+QA
↓
7.リリース
このようにデザイナー自身が「セルフカンプチェック」を行いスキル上位者が「カンプチェック」を行うことで、デザ部内でデザインクオリティをしっかり担保してから依頼者へお渡しするフローになっています。
カンプチェックを行う2つの理由
1.デザインの『クオリティ管理』をするため
デザイナーの制作物を見たり使ったりするのは、依頼者(クライアント)ではなくサービスを利用しているユーザー、もしくはサービスの見込み客です。
デザイン(見た目や使いやすさ)に対するユーザーの評価は、デザインそのものに対してではなく会社やサービスに対する評価になります。
つまりデザイナーの制作物は「自分の作品」ではなく「会社の商品」であり、デザイナーごとに『クオリティ管理』をするとスキルや好みによってクオリティにバラつきが生じてしまいます。
「会社の商品」である以上、統一感のないクオリティは会社やサービスの質に悪影響を及ぼしてしまいます。
そこでデザインのスキル上位者が「客観的視点」+「技術的視点」でチェックをし、クオリティのバラつき防止+安定したデザインを担保するための『クオリティ管理』が必要になります。
2.デザイナーの『教育・成長フォロー』をするため
デザイナーのスキルを向上させるための効果的な方法は、先輩デザイナーが制作物をチェックしてフィードバックをすることです。
チェックをすることで、デザイナーでは気づけないミスに対しての指摘・改善ポイントのアドバイス・ノウハウやナレッジを伝えることができます。
組織としてスキルの高いデザイナーが増えれば会社も成長できるので、デザイナーのスキルを向上させるためにも『教育・成長フォロー』が必要になります。
カンプチェックでやっていること
では「カンプチェックを行う2つの理由」を軸に、具体的にやっていることを詳しくご紹介していきます!
1.デザインの『クオリティ管理』でやっていること
A.デザイン性・サービスとしての統一性をチェック
会社として、またサービスとして制作物に...
という点をチェックします。
チェック項目は以下の通り。
B.客観的視点でのチェック
「ユーザー視点」と「依頼者視点」、2つの視点からチェックを行います。
ユーザー視点(ユーザビリティ):
チェック項目は以下の通り。
依頼者視点(要件精査):
チェック者は見た目や使いやすさのチェックとセットで依頼内容もチェックします。
依頼内容に対して制作物の表現が妥当か・課題が解決できるかをジャッジするために、依頼内容は欠かせない情報となります。
チェック項目は以下の通り。
2.デザイナーの『教育・成長フォロー』でやっていること
カンプチェック後のデザイナーへのフィードバックでは、修正点を伝えるだけはなくデザイナーの成長を目的としたアドバイスも行います。
修正の必要性+どうすればデザインが良くなるかを分かりやすく説明し、ノウハウやナレッジを伝えることでデザイナーのスキル向上に繋げます。
チェックを通じて後輩デザイナーが先輩デザイナーとコミュニケーションをとる良いキッカケにもなっています。
フィードバックのメリットは、デザイナーの成長だけでなくチェック者自身の成長にも繋がっている点です。
他者の制作物を見ることで客観的な視点が鍛えられ、修正点やアドバイスを分かりやすく言語化して伝えることでアウトプット力が鍛えられます。
ノウハウやナレッジを伝えることは自分の経験を振り返る良い機会にもなります。
このようにカンプチェックはデザイナー・チェック者が互いに成長するためのコミュニケーションツールとしての役割も担っています。
デザイナーが成長するためのフィードバックのコツを一部ご紹介!
フィードバック方法
デザインの修正度合いが一目で分かるようA.B.C.Dの4つのレベルで判定をしてデザイナーへフィードバックをします。その名も「泣き判定」!
デザ部には「泣きデザイン」というアイデンティティがあります。「全米が泣いた」のように「泣く=感動」と解釈し「感動するデザインを作ろう」という意味が込められた造語です。この「泣きデザイン」から「泣き」を取って判定にくっつけたものが「泣き判定」です。
※「泣きデザイン」については別の機会にブログに載せようと思います、お楽しみに!
ラクーンでは掲示板形式の依頼ツールやbacklogで依頼を管理していて、デザイナーがカンプを作成したら掲示板からチェック者へチェック依頼→カンプチェック→依頼にレスする形で「泣き判定」と一緒に修正指示やアドバイスを記載してフィードバックをします。
では各判定レベルの詳細を見ていきましょう!
【A】泣き! = 修正なし
【B】泣き = 修正すると良くなる(修正必須ではない)
└クオリティより納期優先の場合
└デザ部としてこだわりたいがユーザー視点で問題がない場合
【C】ちょい泣き = 修正必須
【D】泣けぬ = 修正必須、または作り直し
※要件から見直す場合は、デザイナー+チェック者+依頼者で調整が必要になります。
デザイナーがやること
セルフカンプチェック
カンプ制作後、まずやることはデザイナー自身でカンプをチェックすることです。
自分の制作物のクオリティに責任を持つためにも重要なフローになっています。
チェック項目はカンプチェック時のものとほぼ一緒の内容になっています。
デザイン性・サービスとしての統一性
ユーザー視点(ユーザビリティ)
依頼者視点(要件精査)
最後に
カンプチェック依頼
セルフチェック完了後にチェック者へカンプチェックを依頼します。
チェックしやすいよう依頼方法は以下のようにテンプレ化されていて、デザイナー自身が依頼内容を振り返るためにも活用しています。
フィードバックの内容や修正のやり取りをログに残すためにも、口頭で伝えたりメッセージでのやり取りはせず掲示板やbacklogに記載することを心がけています。
対象ページ
確認対象ファイル or フォルダ
依頼背景
チェック者に伝えたいこと
チェック期限
どんな人がカンプチェック者?
主にデザインスキルが高いメンバーがカンプチェックを行っています。
スキル上位者
デザ部ではデザイナーのスキルを5段階評価で数値化していて、このスキル値が高いデザイナーをスキル上位者と呼んでいます。
チェックをするためにはスキル値が高いことが条件になるため、ノウハウやナレッジが豊富なスキル上位者がチェックを担当をしています。
ディレクター・アカウントリーダー
プロジェクトでデザイナーの管理をするディレクターや、各サービスの依頼窓口を担当するアカウントリーダーは、サービスの理解度が高く制作物のクオリティの管理ができるためカンプチェックを行います。
その他
小規模案件のカンプチェックをスキル上位者ではないデザイナーが担当するケースがあります。
「教育・成長フォロー」でご紹介した通り、デザイナーは他者の制作物のチェックを経験することで、客観的視点やアウトプット力を鍛えることができます。
将来的にデザイナー全員のスキルが向上して、カンプチェックではなくデザイナー同士でチェックが完結したらいいなあ、と思っています。
まとめ
最後に今回の記事のまとめです!
いかがでしたか?
ラクーンのカンプチェック文化はデザイナー+チェック者双方の意見を取り入れこの形になりましたが、今回ご紹介した仕組みはまだまだ完成形ではありません。
新しいデザイナーが増えたり新しいツールを導入するなど、環境の変化によってカンプチェックの仕組みもアップデートしていく必要があります。
そのためには継続的にカンプチェックについてデザイナーと意見交換をし、新しい運用方法を模索していくことが重要だと思っています。
最後まで記事を見ていただき、ありがとうございました!