エンジニア部門のアイデンティティーを再定義した話
こんにちは、たむらです。
企業という単位では、コーポレートアイデンティティ(CI)としてアイデンティティの定義がされることは良く見る光景だと思いますが、今期私達は部門でもCI同様のアイデンティティを定義しました。今回はそのことについて書きたいと思います。
部門アイデンティティ設定の背景
なぜ、部門アイデンティティの定義をすることになったか?というと、今期の部門の目標で掲げたからになります。
今期の目標には下記のように理由を述べてます。
ラクーンでエンジニアとして働く意味とは何でしょうか?またどう働くべきなんでしょうか?
外的な状況として、会社の経営理念や創業社長である小方が培ってきたイズム、ホールディングス化などがある中で、今一度自分たちは何者か?を考えることで、「何をすべきか?」、「何が足りないか?」、「今後どう変えていくべきか?」が見えてくるのではないかと思います。
「会社」の意志というのは経営層でも管理職でもなく、社員の集合体そのものだと考えています。その意味で会社における技術戦略部の意味を自分たちで改めて見直したいです。
- みんなでコンセンサスを取りたいこと
- 技術戦略部の価値は何か?
- ラクーンのエンジニアとして何をすべきか?
これらが見つめ直せることで、技術戦略部のバリューが明確になり、みんなのラクーンで働くことの意義や業務範囲なども明確になっていくのではないかと考えています。
ラクーンは1990年代に小さなベンチャーとして創業し、僅か30年程で東証一部上場するまでの会社に成長しています。当初はECサービスだけの運営でしたがFintech関連のサービスも順次立ち上げを行い、B2Bサービスを複数展開する企業となっています。また、その過程ではM&Aなどで複数の会社がグループに加わっていたり、ホールディングス体制に会社の形態を変えたりといったこともしています。
この様な変化があると、色々な矛盾を感じるシーンが出てきます。
例えば・・・
- 自社サービスだから開発やリリースが高速!
- ドキュメントや契約に縛られない点は確かに早いけど、逆にシステムも肥大化してきてる割にドキュメントが不足してたり人に依存した体制になってない?
- エンジニアも企画にグイグイ参加できる
- サービスの企画とかにも意見を言える環境なのは事実。でも事業部側にも企画部署とかがありどう役割分担するの?
などなど。
こういった自分が働く上で感じる矛盾について改めて見直せる機会としたい、というのがアイデンティティ設定に対する一つの理由です。
またもう一つの理由として、長く働いている&目の前の仕事に打ち込んでいると「何故この会社で働いているのか?」とか「仕事を通して何を求めているのか?」とかを忘れてしまうことは誰でもあると思います。
そんな時に自分の場所がしっかり定義できていると、今の自分のヘルスチェック基準となるのではないかと思い、アイデンティティの検討に至ったのでした。
どの様に決めたか?
部門アイデンティティは2020年5月から検討を開始し、約1年かけてじっくり策定しました。決定に至るステップを振り返ってみましょう。
1. プロジェクトチームの作成
まずは、アイデンティティ設定プロジェクトチームの設立を行いました。チームリーダーといった役職者の他に、一緒に議論したいと立候補してくれたメンバーで約15名程度のチームを立ち上げました。
基本的には、週1回程度の定期的なミーティングをそのプロジェクトで行い、部門アイデンティティ設定を進めました。
2. 議論の進め方
当時既にコロナ禍であったこともあり、議論はZoomベースで、資料としては Miroというツールを用いて意見交換を行いました。
ちょっと話は逸れてしまいますが、リモートワークの浸透でオンライン編集ツールも色々出てきてますよね。この時に使った Miro はカーソルの動きなどから誰がどこらへんを今見てるみたいなのが分かるところやUIの親しみ易さが便利でした。無料プランだと利用するボード数に制限がありますがオススメです。
議論は下記のような内容で進めていきました。
- なぜアイデンティティを定義するのか?
- アイデンティティとはどんなものであるべきか?
- [As-Is]今の技術戦略部ってどうなのか?(KPTベース) の検討
- [To-Be]我々はどう周りから見られたいのか? の検討
- 周りのエンジニア(業界)から
- 事業部から
- エンドユーザーから
- 会社から
- その他関係者から
- [To-Be]周りは我々に何を期待されているか? の検討
- 周りのエンジニア(業界)から
- 事業部から
- エンドユーザーから
- 会社から
- その他関係者から
- 部門アイデンティティの元となるキーワードの抽出
3~5 のワークを通して出てきたワードから、部門アイデンティティを考える上で重要なキーワードを抽出します - 部門アイデンティティワードの選定
6 のキーワードを踏まえて、キャッチコピー/タグラインとなるようなワードを選定しました - 部門アイデンティティ決定!
実際に議論していた時のMiroです。
何になったか?
で、結局どんなものになったかというと・・・
という部門アイデンティティワードになりました。
まず、アイデンティティを導くキーワードとしては以下のようなものが挙がりました。
技術力関係
- プロフェッショナルであること
- 高い技術力を持つこと
- 開発スピードを追求すること
- フルスタックエンジニアを目指すこと
- アウトプットができていること
- エンジニア業界への貢献ができること
事業・事業領域関係
- 良いサービスの提案ができること
- 事業に貢献すること
- ビジネスに対して真剣であること
- BtoBサービスとして質実剛健なものが提供できること
- 適切な解決(スピード、品質、提案)ができること
- 企画から携われること
- エンジニアという立場から提案や課題解決ができること
チームワーク関係
- 一緒に働きたい仲間であること
- 相互に理解できていること
- 助け合える関係であること
- 一緒に事業を育てられること
環境・風土
- 成長できること
- 風通しが良いこと(自由な発言・権限移譲)
- ワークライフバランスが取りやすいこと
- 安心感がある会社であること
技術力に関してはエンジニアとしての視点でどこの会社でも同様の志向がでてくるのではないかと思いますが、内製している会社だからこそ出てきているであろう事業や事業領域関連のワードや、ラクーンらしさを表しているチームワークや環境面のワードは、ラクーンという会社に所属するエンジニアであることを体現するものとして大事な部分なのだと改めて気付かされます。
「おかしくない」
これらを踏まえて、キャッチコピー的に定めたのが先程紹介した「おかしくない」というワードです。
これは、
常に「おかしくないか?」を自ら問い、「おかしくない状態」を作っていくという意思 を示し、
今を越える為のキーワード であり、
「当たり前」に対して疑問を持つきっかけを作るキーワード
として定めました。
私達は、
エンジニアとして
常に最適な課題解決ができる技術力を追求し、
自社サービスの運営者として
お客様が本当に満足するより良いものを提供することに努め、
ラクーンという会社の仲間として
お互いに助け合い、成長し合えるずっといたくなる会社をみんなで作っていかなければならない。
その為に、常に今が最適かを自らが問いながら進歩を続けようという気持ちから生まれたものです。
「おかしくない」の実用
「おかしくない」を使って最初に例で挙げた矛盾に答えるならばこんな感じになるでしょうか?
- ドキュメントや契約に縛られない点は確かに早いけど、逆にシステムも肥大化してきてる割にドキュメントが不足してたり人に依存した体制になってない?
- 早さは大事。でもそこから生まれる課題が問題であるならばそれはやり方がおかしくない?QCDを含めたベストなやり方を考えよう!
- サービスの企画とかにも意見を言える環境なのは事実。でも事業部側にも企画部署とかがありどう役割分担するの?
- そもそもセクショナリズムなんてラクーンにはないし、技術力やアイデアを駆使して本当に顧客が求めるものを提示できるのであれば、それをやらないのはおかしくない? どんどん提示してサービスをより良くしていこう!
ブランドブックの作成
更に、ここで定めたアイデンティティを浸透させるためにブランドブックというものを作りました。
日常の業務に集中しているとやっぱり忘れてしまうものなのでたまに見返した時に心を燃やせるようにかっこよく作りました!
また、こちらは私達を示すものになるので、採用や今後の部門の目標などでも活用していこうと思っています。
アイデンティティを作ったその後は?
アイデンティティを定めた、というだけでは具体的なアクションには中々繋がりません。「言われてることはもっともだけど、さて?」という感じになってしまいます。ですので、来期以降は本格的にこのアイデンティティを踏まえたアクションプランを実践し、目指す理想に近づく為の実践をしていこうと思っています。
具体的な例としては、「浸透させるために定期的にワードをみんなの目に入るようにする」とか、「アウトプットへの取組みをルール化する」とかになってくると思いますが、評価指標や面談は勿論、何かをジャッジする時にこのアイデンティティを軸にまわしていく部分が一番肝になってくるだろうと思っています。
最後に
いかがでしたでしょうか?アイデンティティというと、広義には「自己」とか「同一性」とか言われるので、改めて自己を定義するっていうと違和感を感じる方もいるかもしれません。
ですがその対象が特に組織の場合、定期的に確認し明らかにしておくことは大事なことではないかと思います。
組織というのは概念はあれども実態は所属する一人ひとりの自己が寄り集まっただけのものです。ですので組織のアイデンティティを問うた場合、外的な要因の有無に関わらず、それは所属メンバーのアイデンティティの中央値に近いものになる筈です。そのため、組織の人が増えた時や状況が変わった時には以前のものと乖離することが起きるのです。
もし、「昔は~だった」といった声が良く聴こえるようになっていたり、メンバーの意思疎通で違和感を感じることが多くなったりしているならば、今一度組織の定義を振り返ってみるタイミングなのかもしれません。
以上、技術戦略部のアイデンティティについてのお話でした!