ミニマムで始めた勉強会「デザインレビュー会」が5周年を迎えるまで
デザイン戦略部のスエノです。
2019年から月1回行っている部内勉強会「デザインレビュー会」が昨年で5周年を迎えました。主催として立ち上げ、現在デザイン戦略部の12名が参加・活動しています。内容はすごくシンプルでスタンダードな勉強会なのですが5年も続くにはそれなりに理由があると思い、良い機会なのでまとめました。企画を継続することの面白さ・難しさ・大切さを身を持って知れた勉強会なので、これまでの経緯をご紹介したいと思います。
部内勉強会ネタ・スキルアップ・コミュニケーション向上などの実例としてご参考いただければ幸いです。
デザインレビュー会とは
ざっくり言うとデザイン成果物の品質をみんなで検証・レビューする会です。
デザイン戦略部はサービスごと(スーパーデリバリー・Paid・URIHOなど)にチームが分かれており、仲間として横の繋がりはあるものの他サービスの具体的な作業内容・成果物のインプットが難しくありました。過去に似たインタラクションを設計してナレッジ・ノウハウ共にあるにも関わらず、それに気づける場が無いという事象はシンプルに非効率だったので、少しでも機会を設けたいと思い立ち上げています。
最初は部内勉強会という立ち位置ではなく有志で、人数も6名ほどから「あ!こんな場があったらみんなハッピーじゃん!やるべ!」程度の軽い気持ちでミニマムスタートしました。この”ハッピー”が今も続いていることが、この勉強会が継続している理由だと思っています。
キックオフ
まず何をしたかというと、以下を3年以内の若手デザイナーに説明する機会を設けました。
- 現状課題
- デザインレビュー会の目的
- やりかた
- ルール・解散条件
いわゆる「こんな事をこういうルールでやりたいがOK?」という意思確認です。
3年以内に絞ったのは若手デザイナーと中堅デザイナーの自走力に差があったため。また有志で立ち上げる勉強会なので、私の意思が反映されるよう自由度を上げるためでもあります。強制参加にはせず、空気感も自分が楽しく学べる場にするつもりでした。それに賛同してくれる人と一緒にやろう、という主催のエゴ丸出し勉強会です。
現状課題
これは前述した「他サービスの具体的な作業内容や成果物をインプットすることが難しくある」現状を説明し、インプットとアウトプットの場を作りたいという意思をお伝えしました。
目的
課題をふまえ、以下を目的に定義しました。
- サービスをより良いものにするための品質向上
- 個人のスキルアップ
- デザインの言語化
- デザイン引き出しの増加
私自身が表層(ビジュアル・装飾・ブランディング)を評価いただいているデザイナーなので、レビューが少し偏る可能性もこの時点でお伝え済。
やりかた
月一でレビュー対象者3名を選出。1人ずつ発表し、他参加者がレビューする。進行は発表者に行ってもらい、タイムキーパーとしての訓練も含めました。
ルール・解散条件
一番大切で、しっかり伝えたかったのがこの2つです。
ルール:
- 聞く側も「聞く姿勢」をもつ
- 自分の意見・感想を自分の言葉で伝える
- 成果物を良くしようと努力する
知っておいてほしいこと:
- デザイン指摘は人格否定ではない(誰かを傷つけたり関係性が悪化する場になったら即終了)
デザインは「好き・楽しい・夢中」というポジティブなメンタルを持たなければ継続は厳しいと思っています。そのため「楽しく勉強する場づくり」を全員で意識することは私の中でとても重要でした。レビュイー(レビュー対象者)・レビュアーどちらの立場でも、協力する姿勢を持って取り組むことを丁寧に伝えています。
幸いにも賛同いただいた6名で、この勉強会は2019年にスタートしました。
初期:手探り試行錯誤
スタート1年目。初期はスケジュールを管理しているグループウェアGaroonにフォルダパスを貼り(※画像参照)以下のルールで運用しました。
- 月1回第2木曜に1時間勉強会を設定。歴が長い順に1時間3名20分ずつ発表
- 発表時間内で説明・質疑応答・レビューを終了させる
- レビュー対象者は事前に成果物(リンク・スクショ・印刷物は印刷したもの)を準備して指定フォルダに格納or持ち込み
- レビュアーは事前にフォルダ内を確認しておく
フロー安定を目的にとにかく回数をこなし、リッチにせずミニマムで走り出すフォーマットです。だいぶ雑ですがそれなりに運用は出来ていました。というのも、リモートワーク制度の無いコロナ前、且つアドリブの効く社内開催だったことが大きいと思います。
これまで他ドメインのデザインをじっくり時間をかけて説明してもらう機会が薄かったので、対話しながらのレビューはとても新鮮で楽しかったのを覚えています。
回数を重ねるごとに課題も見えてきたので、年度の終わりにはアンケートを取り、自発的な課題とアンケートから見える課題の両面を次の年で改善できるよう案出ししました。
初期に出た課題と改善案
1)準備に意外と時間がかかる
web(特にUX)の成果物は数ページに渡るためスクショの枚数も多くなり、背景説明も複雑なためまとめるのに時間がかかり大変。他の案件が圧迫されてしまう。
改善案:
- レビューして欲しい部分に発表範囲をなるべく絞る。慣れてくればスムーズに行くかも。
- miroを利用し、スクショを貼り付けるフォーマットを作成。無駄な思考時間を減らし時短しよう。
2)発表できる成果物がない
「プロジェクト(長期案件)でまだ成果物が出来ない」「現案件は成果物が無い」など、担当する案件によっては成果物が生まれない時期が発生し、発表に繋がらない。
改善案:
- 持ち時間をスキルアップの場に使用する。実施案件で聞きたいことや困っていること、聞いてみたいことの雑談、素朴な疑問などでもOK。何かしら目的達成に繋がるアクションを起こす。
3)発表時間が短すぎて本題に入る前に終了する
1時間に3人発表、1人あたり20分の発表時間ではだいぶ急ぎ足になり、複雑な案件の場合は内容説明で終わってしまうことも。
改善案:
- 勉強会1時間30分、2名40分体制に変更。時間を倍に増やす代わりにレビューに時間を掛けリターンの質を上げる。
改善になり得るかわからない案も、やってみよう精神で色々トライできたのは今思うとミニマムだったからかも。非常にフッ軽で良かったです。
中期:課題解決祭り
スタートから2.3年目。初期で出た改善案を実行し、以下のようにルールを更新しました。中途や新卒入社の新しい仲間も都度受け入れ、参加者も8~10名に。
- 月2回第2水曜に1時間30分勉強会を設定。歴が長い順に2名40分ずつ発表
- 発表時間内で説明・質疑応答・レビューを終了させる
- レビュー対象者は事前に成果物(リンク・スクショ・印刷物は印刷したもの)を準備してmiroに貼り付けておく
- レビュアーの事前確認は任意
大きな変化はツールがmiroに変わったこと、発表者が3名から2名に減ったことです。
この時期から新型コロナウイルス感染症がパンデミック化、通称コロナ禍がやってきます。全社在宅ワークとなったため対面開催からzoomでのWeb開催に移行することになりました。ただ前年miroにツール変更していたことで移行はスムーズに行き、Web開催自体の弊害はほぼありませんでした。
発表者の削減は思ったより良い影響が大きく、勉強会全体を安定させる改善になりました。40分の余裕があると焦らず進行でき、質問も遠慮なくできるので内容理解も強くなり質の高いフィードバックができるなど、円滑に進むようになったと感じています。
とはいえ課題は常に出てきます。慣れて安定すると小さな綻びが目につくように、細かな課題も露呈していきました。
中期に出た課題と改善案
1)決まった人しか発言しなくなる
デザイナーの発言が挙手制で対話式だったため、毎回決まった人しか発言しなくなり、レビュー対象者が持ち帰れるフィードバックも意見が偏りがちに。コミュニケーション・プレゼン訓練の面でもマイナスが大きい。
改善案:
- どちらが悪いという話ではなく、ルールが甘いため起きた事象。挙手制対話式を撤廃し、miroに貼り付けた成果物に全員が付箋でフィードバックする記述式に変更。その後レビュイーが興味深い付箋内容をピックし、付箋者が口頭補足するやり方にシフト。
2)人数増加と発表者削減で自分のターンが半年後に
人数も増え月1回2名発表だと年2回ほどしか自分のターンが回ってこず。もう少し多めにターンが欲しい。
改善案:
- 2班に分割し6名体制に変更。レビュー会古参メンバーを班長兼レビュアーに任命し、旧レビュアー(=私)は都度どちらかに参加。最大人数を減らすことで発表回数を増やす。
3)レビュイー進行で時間オーバーし、勉強会時間が大幅に押す
レビュイーが主導権・進行を行うルールなので進行がうまくいかず勉強会時間がオーバーするようになった。これも訓練なので進行担当は変えたくない、しかし時間オーバーは避けたい。発表がUXや複雑な経緯のある成果物だと益々時間が足りない。
改善案:
- アイスブレイクや総評などを導入し、時間を5分単位で厳格に決めた進行フローに変更、これに沿って進行をする。
- また発表前に「発表終了は何時なのか」を宣言するよう定め、時間への意識を向上。他参加者も時間が来たら「時間だよ」と声掛けするよう周知する。
後期:だいぶ安定
スタートから4.5年目。中期の改善案を実行し以下のルールに。スムーズで安定感のある運用になりました。
- 月2回第2水曜に1時間30分勉強会を設定。歴が長い順に2名40分ずつ発表
- 2班体制に変更。班長(レビュアー)は会全体の進行と目的達成の舵取りをする
- レビュー対象者は事前に成果物(リンク・スクショ・印刷物は印刷したもの)を準備してmiroに貼り付けておく
- 発表時間内でmiro内にある分刻みのフローに沿って進行。また開始前に終了時間を宣言する
- 発言は挙手制対話式ではなく付箋での記述式に
- レビュアーの事前確認は任意
大きな変化は2班体制にしたこと、進行フローを細分化したことです。
2班体制は持ち帰れるレビュー数が減ってしまうリスクがあったものの、1巡が短くなり自分のターンが増加したことで、1つの成果物を2回に分けて発表するなどユニークなアクションも見られるようになりました。
進行フローの細分化は厳格すぎて自由度低下の印象があるかもしれませんが、脳のメモリをルーティンではなく発表内容へフルコミットできるので、目的達成への質の向上が期待できる点には大きなメリットを感じています。
現在
現在はスタートから6年目に突入。この後期のやり方でだいぶ安定しており、アウトプット・コミュニケーション・LT訓練、どの角度からも満足な結果が出ています。ただ課題は永遠に沸くもの。レビューの偏りを防ぐために参加者をシャッフルしてみたり、マンネリ化を防ぐために企画を考えたりと、試行錯誤をしながら継続中です。
企画してみての感想
こうして経緯を追っていくと、継続できている理由は「楽しみながらやれていること」だなと再確認しました。あらゆるタイミングで多くの課題にぶつかり、終わりのない試行錯誤をするのはやはり骨が折れるわけで。その中で参加者が楽しく取り組めたり、得をしたり、何かしらポジティブな結果が得られる場になれていることが嬉しく、その景色を見ることが私の楽しみの一つです。
本来のスキルアップ視点だけでなくコミュニケーション視点でもポジティブなリターンが多くあったので以下にまとめました。
スキルアップ視点
- 発表者は多くのレビューがもらえる
- プレゼン訓練になる
- デザインの言語化がうまくなる
- 引き出しやアイデアが増える
- 仲間と一緒に学習できる
コミュニケーション視点
- 誰がどんな成果物を生み出しているのか理解できる
- コミュニケーションが生まれる
- 仲間の得手・不得手がわかる
- 仲間の良いところを見つけられる
- 場づくりのうまい人
- 発言数は少ないが説得力がある人
- プレゼンがうまい人
- 時間配分がうまい人
- 周りをサポートしてくれる人
これからも私が飽きないうちはやっていきたいですね。
以上、デザインレビュー会の回顧録(?)でした。
ラクーンホールディングスでは現在デザイナー・エンジニアを募集中です!
今回紹介した勉強会のように、デザイナーやエンジニアでもやりたいことを実現しやすい現場です。少しでも興味がありましたらぜひご応募ください。お待ちしております!